1回目記事からの続きです→こちら
3-1・タイガーの高級炊飯器
3回目記事のトップバッターは、タイガーの高級炊飯器の比較です。
象印のライバル企業ですが、象印とは異なる方向性で面白い炊飯器を出しています。
1・高性能炊飯器の比較 (1)
1-1:選び方の基本の説明【導入】
1-2:各社の中級機〈3〜5万円〉
2・高性能炊飯器の比較 (2)
2-1:象印 〈炎舞炊き〉
2-2:パナソニック 〈ビストロ〉
2-3:三菱〈本炭釜 紬〉
3・高性能炊飯器の比較 (3)
3-1:タイガー〈ご泡火炊き〉
3-2:東芝〈炎匠炊き〉
3-3:日立〈ふっくら御膳〉
3-4:アイリス〈瞬熱真空釜〉
3-5:ティファール〈ザ・ライス〉
4・高性能炊飯器の比較 (4)
4-1:バーミキュラ〈ライスポット〉
4-2:最終的なおすすめの提案【結論】
今回も、1回目記事の冒頭(こちら)で示した「選び方の基本」に沿って、各製品を説明していきます。
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また、以下の記事では、Atlasのおすすめポイントを赤系の文字色で、イマイチと思う部分を青字で記しています。
【2025年8月発売】(旧機種もあり)
35・タイガー 土鍋ご泡火炊き JRX-S100-KS
35・タイガー 土鍋ご泡火炊き JRX-S100-WS
¥119,780 楽天市場 (7/1執筆時)
炊飯方法:可変圧力IH
圧力炊飯:1.2気圧
内釜素材:本土鍋
内釜厚さ:5mm
内釜保証:5年保証
保温機能:おひつ保温
堅さ調整:5段階+銘柄炊き
JRX-S100は、「タイガー〈炊きたて〉ご泡火炊き」として発売する、同社の最上位機です。
同社の100周年記念で出された製品の後継機になります。
本機も、旧機が残りますが、新機種の機能性を示したあと、違いを説明することにします。
炊飯方式は、パナソニックなどと同じく、可変W圧力IH炊飯です。
かけられる圧力は、最高1.2気圧(105℃)です。
パナソニックは、「米を踊らせる」という目的で可変圧力を採用していました。
一方、タイガーはどちらかといえば、炊飯終盤(追い焚き・蒸らし)まで、高温を維持するために、この工夫を利用しているといえます。
ようするにお米が炊けて水が少ない状況でも、圧を段階的に調整して、終盤まで、高温を維持できるようにするという工夫です。
気圧・温度を炊飯中に制御することで、お米の甘みと粘りをバランスよく引き出すという、直接的な「味」の意味で利用しています。
なお、2020年段階(JPL‑A100)まで、最上位機クラスだと、多段階圧力機構とされて1.05気圧、1.25気圧と2種の圧力だけでなく、中間的に何段階かに分けて減圧できる、多段階圧力機構を搭載しました。
現状は普通の2段階に戻されていますが、メンテ性などの問題からかと思います。
搭載されるIHヒーターは、下面の2段です(WレイヤーIH)。
タイガーは、先述のように、下面過熱重視で、他社のような全周ヒーターは不採用です。
ただ、タイガーは、「土鍋ご飯の再現」を目指すため、最上位機でも(あえて)「下面だけ」にしています。土鍋自体の蓄熱性を使って沸騰温度を維持する仕組みですから。
一方、22年以前の世代の製品(280℃)と比べて、底面IHをかなり強化(160%)し300℃の加熱を実現しています。
底面を強火力にしつつ、ゆっくり熱が回る土鍋の性質を利用し、内鍋の中でに上下の温度差を作り、お米の対流を促すという発想です。「かまど」の再現ともいえます。
また、(ルクルーゼなどのセラミック鍋と同じで)土鍋はいったん温度が上がれば、蓄熱性は群を抜くので、炊飯後半に必要な「沸騰温度の持続」面でもメリットがあるといえます。
一方、配置の部分で下面コイルを2重にしている部分に、意味が見いだせます。
1層目は釜全体に熱を伝えること、2層目は底面の加熱力をより強化することを意図します。
つまり(かまど同様の)「底面発熱」が美味しさの源というタイガーの哲学をキープしたまま、熱周りが良くしていると言えます。
ご飯の甘みは同社が言うように、この方式は「引き出しやすい」と思います。
沸騰温度の持続性は、センサー面の工夫もなされます。
2025年機から内釜底部の温度センサー(センターセンサー)が新仕様になりました。
匠火センサー(たくみび)という名前ですが、土鍋底部近くに寄せられるフラット形状を採用することで、底温度の検知精度が、1.8倍になりました。
一方、後ほど改めて説明しますが、旧機は、泡の拭きこぼれを、内蔵の「はりつやポンプ」からの風で防ぐ工夫がありました(連続ノンストップ加熱)
タイガーは(木ふたを被せた)「かまど」炊きが理想なので、吹きこぼれ寸前の高火力で熱をかける旧形式のほうが、仕組み的には「かまどにより近かった」ように思います。
半面、旧機はアナログ的な方法ですし、しっかり制御しにくい部分があったといえます。
そのため、ある種「失敗しにくい」匠火センサーを「次のステージ」の方式として選んだのかと思います。
旧機の仕組みでもかなり美味しく炊けたのですが、個人的には、設置環境や米質、水加減の違いでも、柔軟に制御できる、安定性を重視した「ポジティブ」な変更に思いました。
消費電力は、タイガーは低めの1080Wです。
仕組み的にヒーターが少ない利点です。
先述のように、電気代は変わらないものの、市販のレンジ台のコンセント許容量(2口合計で1500W)の問題に「優しい」と言えます。 なお、消費電力量自体は、出荷時設定の「エコ炊飯」モードでの値です。他社と同じです。
そのため、通常炊飯時の電気代自体は、消費電力が少なめだから安いというわけでもないですし、他社とも比べられません。
使われている釜は、鍋の厚み最大5mmの本土鍋です。
タイガーは本物の土鍋(セラミック)です。鉄製の釜よりも重厚感があります。
焼成を3度繰り返すことで作られた本格仕様です。本体の値段の数割分はこの釜の値段でしょう。以前の「プレミアム」の文字が取れましたが、同じく、萬古焼であり、グレードダウンではないです。むろんIH加熱に対応するような素材を使っています。
下部の発熱体に新素材(シラスバルーン)を配合した上で、釉薬に遠赤効果が高い鉄・コバルトを加える新しい工夫もなされます。
熱の伝わりがさらに良くなり、お米の甘みと弾力が増しました。
また、本機は土鍋を模した構造のため、「香ばしい」ご飯が炊くことができます。
なお、土鍋は落ちれば割れますが、万古焼は半磁器(b器)でありかなり堅牢です。水による劣化を理由にしたひび割れも保証対象なので、過度の心配は要らないでしょう。
ただ、美味しく仕上がる分、鍋に重さ(約1kg)はあります。金属製より200g以上重いのは、どうにもなりません。
コーティングは、6層です。
土鍋の上に、熱伝導性を確保するためアルミ溶射をした上、最上部に土鍋用のフッ素加工をしています。
また、一層目のコーティングに特殊プライマーを混合しており、耐久性を高めています。
外装はむろん土鍋素地です。 保証は5年です。
ご飯の堅さは、しゃっきりからもっちりまで、お好みで5段階の「ねばり加減」を選べます。(米(マイ)チューニング」機能)
おこげご飯は、タイガーがこだわる部分です。
白米・少量炊き・炊込みご飯ですので、火加減が多段階調整できます。
なお、今回おこげ「マイナス」がついたのは、先述のセンターセンサーの高性能化もあったかと思います。
なお、おこげは同社の昔からのこだわりで、初めてこのモードを作った企業でもあります。
そのほか、おかゆ、おこわの各モードもあります。
珍しいところでは、おにぎりモードが25年から加わりました。
給水時間を長めにとり、一気に高温にする炊き方です。目の付け所は面白いと思いました。
米の浸水は、一方、極・低温吸水メニューという炊飯モードがあります。
冷蔵庫で事前(6時間以上前)に研いだお米いれておき、甘み、ふっくら感を引き出すというものです。他社の「超音波浸水」など、浸水時間の時短を図れる機能性ではないです。
むしろ、手間をかけて、甘みを引き出すための「極み炊き」系の機能性です。
銘柄炊き分けは、70銘柄です。
各銘柄を「ねばり」「かたさ」の指標わけしたものです。
ただ、銘柄炊きを選ぶ場合、パネルには、5種「コシヒカリ・ひとめぼれ・つや姫・あきたこまち」のみ表示に出ます。その他は、パネルに銘柄名は出ないため、説明書を見ながらの番号指定です。
一方、パナソニック・三菱電機と違って、銘柄指定する場合、食感の選択は不可です。
火加減も選べません。
健康米は、麦飯・雑穀米・玄米の各モードがあります。
なお、従来はタイガーは「麦飯」にわりとこだわりがある印象で、 押し麦・もち麦ほ・麦粥などの諸モードがありました。
ただ、25年機は1種類で、その特徴はなくなりました。

保温部分では、「おひつ保温」が見どころです。
ハリつやポンプを利用するものです。
先述のように、炊飯過程では25年機からハリつやポンプは使われない用になりましたが、炊飯終了後には、引き続き使われます。
市販の木製おひつのふたに見られる調湿機能を摸したものす。
外気をポンプでなかに取り込むことで、過剰な蒸気でご飯の表面が(不必要に)柔らかくなるのを防ぐためで、ご飯に「ハリ」を生み出します。
下位機種の場合、タイガーは、保温は低機能であり、課題です。
しかし、この工夫で、ある程度味を保ったまま、「24時間保温」なので、従来の同社機より対策力に期待できます。
お手入れは、楽です。
だいぶ昔の同社の最上位機と比べると、圧力ボールがなくなったことで、内フタがさらに洗いやすくなりました。2点洗うだけなので楽です。
内フタの食洗機対応は、個人的にはポイントが高いです。
そのほか、本機には、少量炊飯を美味しく仕上げるための「中フタ」が付属します。
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以上、タイガーのJRX-S100の紹介でした。
従来からの土鍋技術をベースに、可変圧力の新方式といえる多段階圧力機構とハリつやポンプと、新技術を惜しみなく搭載したハイエンドです。
ライバルと言える象印が「炎舞炊き」で「ふっくら粘る」圧力炊飯を極めたの対して、タイガーは、土鍋炊飯を極めた形で「ハリがあって甘いご飯」という(ある種)対極を極めようとした野心作といえます。
個人的にこの傾向のご飯は好きで、(1世代前ですが)実際食べた際も好印象でした。登場から数回の改良で、問題点の改良も進んだ感じですし、その部分でも選んでよい状況です。
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なお、このシリーズは、旧機及び下位機がかなりの数があります。
違いを順番にみておきます。
【2024年発売】(Wi-Fiなし)
【通常型番】
36・タイガー 土鍋ご泡火炊き JRX-G100-KG
36・タイガー 土鍋ご泡火炊き JRX-G100-WG
¥83,499 楽天市場 (7/1執筆時)
【直販限定型番】(性能は同じ)
37・タイガー 土鍋ご泡火炊き JRX-G100K
¥118,000 Amazon.co.jp (7/1執筆時)
【2023年発売】(Wi-Fiあり)
【通常型番】
38・タイガー 土鍋ご泡火炊き JRX-T100-KT
38・タイガー 土鍋ご泡火炊き JRX-T100-WT
¥76,018 楽天市場 (7/1執筆時)
炊飯方法:可変圧力IH
圧力炊飯:1.2気圧
内釜素材:本土鍋
内釜厚さ:5mm
内釜保証:5年保証
保温機能:おひつ保温
堅さ調整:5段階+銘柄炊き
第1に、RX-G100などです。
1つ上でみた製品と同じグレードの旧機と考えてください。
2024年機は、センターセンサーが旧式で、現行の匠火センサー以前の精度です。
一方、先ほど書いたように、この世代までは、ハリつやポンプが炊飯過程にも使われていました。
沸騰時に泡が生じることによる吹きこぼれを、外からの風を吹き付けることで抑制し、沸騰時間を伸ばすという機能性です(連続ノンストップ加熱)。
そのほか、炊飯中も「かまど」の木ふたの再現を目指し、過剰な蒸気を逃がすことで、飯の表面が(不必要に)柔らかくなるのを防ぐ役割も果たしていました。
ポンプには、間欠運転機能があり、一度に熱を下げない工夫もあります。
この仕組みで、ご飯に「ハリ」を生み出していたと言えます。従来のタイガーの理想型といえる「ご飯にハリがありつつ、噛めば甘み」という「土鍋炊飯」を極めたといえます。
先述のように、環境や米質に左右されにくい点では新機種が上でしょうが、「木ぶたをした土鍋でのかまど炊飯」の再現性は旧機の方が高いように思います。
あとは、極・低温吸水メニューとおにぎりモードがない変わりに、麦飯モードが充実していた部分を除けば、そこまでの違いはないです。おこげご飯も3段階は選べますので。
2023年機は、それ以後と比べると、内釜の仕様が微妙に変わります。
このあとの世代で、内鍋素材と釉薬の改良があったからです。
遠赤効果を高めることで甘み(約8.5%)と弾力(約5%)増やしています。その上で、保温(おひつ保温)の改良で、保温性能が上がったとされます。
23年機は、一方、Wi-Fiも搭載でした。
TIGER HOMEというアプリが用意されます。
外部からの操作ほか、新しい銘柄米を、スマホ経由で「炊飯プログラムをダウンロード」することが可能とされます。産地別にコシヒカリを炊き分ける「産地炊き」も選べます。
ただ、(テノワールは重要とはいえますが)これは、農場や作り方でむしろ差が付く部分ですので、実用的かは微妙そうです。
お米の保水率が高い新米時期限定の特別プログラムの配信(新米誉れ炊き)も搭載です。炊飯器自体にその機能を持たせなかったのは、(忘れて)年中そのモードで年中炊かれても困るからでしょう。
その部分で言えば、米自体の鮮度をセンシングできるパナソニック方式が合理的です。
あとは、食感別(中間・もっちり・あっさり・やわらかめ・かため)におすすめ銘柄を提案してくれる機能や、炊飯器の利用状況を通知してくれる(主に実家などで有効な)「みまもり機能」、あるいは、外出先から、スマホ経由でしかけ直しなどができる「予約炊飯」などの、IOT対応です。
後の世代で省略された理由は不明です。
本機は100周年機だったので「スペシャル」で搭載した可能性もありますが、ざっと見た感じ、アプリのユーザー評価があまり良くないので、やめた感じはあります。
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結論的にいえば、2025年新機種が、特に、環境や米質に影響されない炊飯ができるという部分で、進化したのは間違いないです。
ただ、とくに、タイガーの「かまどで、木ふたをした土鍋での炊飯」を再現という部分に、「響く」ものがある場合、旧機は「合う」ように思います。
仕様的に、おこげも付きやすいため、そういったご飯が好きな人にもおすすめです。
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【2025年発売】JPL-Y100 KG
39・タイガー 土鍋ご泡火炊き JPL-Y100-KG
¥118,800 Amazon.co.jp (7/1執筆時)
【2024年7月発売】JPL-T100KG
40・タイガー 土鍋ご泡火炊き JPL-T100-KG
¥59,500 Amazon.co.jp (7/1執筆時)
【2023年7月発売】
41・タイガー 土鍋ご泡火炊き JPL-H100-KG
¥63,020 楽天市場 (7/1執筆時)
【直販限定】 JPL-H10-N(2023年)
42・タイガー 土鍋ご泡火炊き JPL-H10NK
¥84,800 楽天市場 (7/1執筆時)
炊飯方法:可変圧力IH
圧力炊飯:1.2気圧
内釜素材:本土鍋
内釜厚さ:5mm
内釜保証:3年保証
保温機能:
堅さ調整:3段階
第2に、JPL-T100などです。
こちらは「土鍋ご泡火炊き」の下位シリーズです。
2025年機は、ここまで見た上位シリーズに比べて、次のような仕様差が見られます。
第1に、火力です。
下面のIHコイルの違いで、300℃はだせず、最大250℃の炊飯になります。
むろんこれでも高火力ですが、上位機と比べると大きな違いです。
一方、本土鍋自体は上位機と同じものですが、底面の発熱体について、上位機利用の新素材(シラスバルーン)の採用はないので、その部分でも差はあります。
したがって、甘さ・弾力の改善効果は、下位機種だと示されません。
内鍋の保証も3年と短縮されます。
第2に、炊き分けです。
食感炊き分けは可能ですが、3段階です。
また、銘柄の炊き分けに非対応です。
第3に、保温です。
「おひつ保温」に非対応です。
そうなると、同社の下位機同様に、保温部分が他社に見劣りするので、保温機能をあまり使わない方を除くと大きな差になります。
第4に、内鍋です。
先ほどまでの上位機の場合、2024年以降は、内鍋素材(白州バルーン)と釉薬の改良がありました。
この世代と、その記述がないので(微妙にですが)下位です。
第5に、少量炊きです。
本機は、先述の「中ふた」が未付属なので、少量炊飯はできるものの、仕上がりに差が出ます。
一方、下位機の場合も、旧機種が残ります。
25年機との違いを示しておきます。
2024年機は、25年機と、若干のメニューの入替を除けば大きな違いはないです。
一方、上位機の場合、24年機までは先述のように「ハリツヤポンプ」を炊飯工程にも使っていました。
本機も加圧につかうポンプはあります。しかし、外気を取り込む通風口はないので、おひつのふたを再現する旧上位機(2024年機まで)のような仕組みはないです。
2023年機は、おこげの部分で、焦げ目強さがの選択ができないほどの違いです。--
結論的にいえば、これらの下位機種でも、底面の充実する火力と、本土鍋というタイガーの味の基本となる部分はあります。
したがって、おこげご飯や、やや堅めで、はっきりした食感のあるご飯好きには向く機種と言えます。
上に書いたように、上位機と機能、装備面での差はありますが、同じく(本物の)「本土鍋」でありつつ、底面に火力を週通挿せつつ、250度の高火力で炊き上げる部分で「かまど」を再現する工夫もあります。
保温機能は使わないという場合、値下がりした旧機に限っては、選択肢にできるでしょう。ただ、買われる際に、上位機の「型落ち」との価格差が1万円ほどだったら、個人的にはそちらを推します。
3-2・東芝の高級炊飯器
続いて、東芝の炊飯器の最高級機です。
同社は、ご飯の美味しい保温にとにかくこだわった最上位機です。
【2025年6月発売】RC-10ZWX-K
43・東芝 炎匠炊き 真空圧力IH RC-10ZWX(K)
¥145,670 楽天市場 (7/1執筆時)
【2024年6月発売】
44・東芝 炎匠炊き 真空圧力IH RC-10ZWW(K)
44・東芝 炎匠炊き 真空圧力IH RC-10ZWW(W)
¥73,000 楽天市場 (7/1執筆時)
炊飯方法:可変圧力IH炊飯
圧力炊飯:1.2気圧
内釜素材:備長炭かまど丸釜
内釜厚さ:7mm
内釜保証:3年保証
保温機能:極め保温
堅さ調整:5段階+銘柄炊き
RC-10ZWWは、東芝の現行の最上位機です。
旧機種が残ります。
違いは、既に見た下位機と同じく、加熱時の気泡を細かくするのを補助する「追い真空」と、炊いたあと3時間まで、真空で水分をキープしつつ、高温80度の暖かさを保つ、「できたて保温」の新設です。
あとは、銘柄炊き分けの銘柄数が2種つ以下になった点、調理コースとして、卵料理(ゆで卵、半熟、温泉卵)ができるようになった点、内ふたの改良で、洗い物の点数が1点へったのが、目立つ違いです。
あとは、同じなので、同時にみていきます。
炊飯方式は、可変圧力IH炊飯です。
同社の中級機と同じです。
かけられる圧力は、一方、下位機種と同じで、最大1.2気圧です。
東芝の場合、可変圧力機構はありますが、ご飯の味のための加圧・減圧は想定せず、高温状態を作り出すことを重視する、象印に近い利用法です。
一方、東芝は、この炊飯器を真空可変圧力IH炊飯器と呼び、他社と差別化しています。 これは、内釜を密閉して「真空」にする技術を搭載するからです。
下位機種でも簡単に書きましたが、真空を作り出せることには、いくつか効果があります。
例えば、「真空パック」と同等の原理で、保温の際の変色を防ぐ効果や、お米を水に浸している際に吸水性を高める効果、逆にタイマー予約中に水を浸透しすぎないようにする効果などです。
こうした機能は効果的ですが、高級機として言うならば、最も重要な加熱炊飯する際には特に機能性を(そこまで)発揮するものではないということは言えます。
たしかに、2025年から下位機種同様に付け加えられた「追い真空」機能はあります。
繰り返せば、初期加熱(70度)までの間、軽く減圧しておくことで、気泡を細かくし、米を傷つけにくくすることで、「ハリ・ツヤ・粒立ち」を良くすると目論見む機能です。
ただ、どちらかと言えば、後ほど書く、内釜の釜底WAVE加工のほうが、この部分に寄与するといえますし、やはり「脇役」的です。
しかし、東芝は、浸水の部分に、同社の下位機同様「こだわり」があります。
本機も、本機は、内釜に真空状況を生み出して「ひたし」を効率化する機能があります(ひたしプラス)。全コースで時間を含めて設定できます。
この部分は、面倒な浸水について、忙しい世代の「時短」に寄与する機能とも言え、わりと良いと思います。
また、水硬度に注目した部分も面白いです。
水の硬度は【ミネラルウォーターの比較記事】で詳しく書きました。ミネラルウォーターで炊く場合ほか、日本でも場所によって水の硬度は変わります。
水の硬度が炊飯の味に変化を付けるのは言うまでもないですが、東芝は、水の硬度に合わせて、炊飯プログラムを調整する仕様にしました(水硬度炊き分け)。
一方、各県の水道水の平均硬度は示されるのですが、取水地の違いもあり、県単位ではあまり意味がないです。
ただ、硬度は水道局が定期検査しているので、問い合わせれば(おそらく)答えてくれるでしょうし、ネット公開している場所もあります。
ミネラルウォーターを利用している方は、ラベルにたいてい記載があります。
なお、最大でも120mg/Lまでしか目盛りがないので、外国の硬水には対応しません。硬水では、そもそも美味しくは炊けないのでこれは問題はありません。
搭載されるIHヒーターは、非公開です。
ただ、下面のIHヒーターを重視した加熱方式です。
その上で、底面のIHコイルヒーターについて、内回りコイルと、外回りコイルを独立制御できるような機構があります。
先ほどみた象印の「ローテーションIH」をシンプル化したといえるものです。
上図のように、内回りと外回りの対流を交互に起こすことで、加熱が弱くなりがちな中心部を含め、内釜全体の温度の均一化に寄与します。
味の向上の上で、こちらは「進化」と言えます。
消費電力は、最大1420Wです。
三菱電機の上位機と同じで、東芝も平均より多めの(家庭用コンセント許容量ギリギリの)ハイパワーで、沸騰温度の維持を目指す方向性です。
ただ、電気の使用効率は良いと言えます。
上図のように、通常モードで炊飯をした場合の年間電気代は、各社の最上位機と比べても良い水準です。
なお、繰り返しますが、消費電力が高い機種が、電気代が高いわけではないです。
東芝の場合も、標準炊飯時ではなく、他社同様、(省エネ達成率をクリアするため)出荷時設定の「エコ炊飯」時の消費電力量をだしますが、電気代はほぼ同じです。
ただ、(瞬間的な)最大消費電力は高いので、ご家庭のブレーカーと壁コンセント許容量(最大1500Wまで、レンジ台は2コ口で1500Wまで)に気をつける必要はあります。
火力は、消費電力の高さを反映して、強力です。
下位機種と同じで、対流を促すため下面に14個の釜底WAVE(ウェーブヒーター)搭載しています。
気泡を細かくすることで「お米を傷つけない」ための工夫でもあります。綺麗な状態で炊飯し、ハリ・ツヤ・粒立ちの良さを高めるための工夫です。
使われている釜は、備長炭かまど丸釜です。
すでにみた、同社の中級機とおなじ釜であり、厚さも同じです。
先述の釜底WAVE加工の工夫ほか、7mmと厚底にすることで下面の熱持続性(蓄熱性)を高める工夫や、丸みを帯びた内釜構造など、味に関わるだろう重要な部分も同じです。
ご飯の堅さは、5通りの炊き分けです。
この部分も下位機と同じで、若干指標わけが曖昧に思えます。
ただ、銘柄炊きは本格的です。
本機は、タッチパネル搭載の分かりやすいディスプレイ上で、70銘柄の炊き分けが可能です。
東芝も、三菱電機と同じで、銘柄を選択した上で、食感選択ができるので、銘柄炊きは楽しみやすそうです。
指標は独自で、お米の粒の大きさや、アミロース値(粘り強さ)を基に仕分けしたようです。
カタログにある「お米本来の特長」を引き出すというのがキーワードと言え、お米自体の特質を強化した感じの仕上がりになるプログラムと言えます。
特別なモードは、少し時間のかかるプレミア炊飯モードとなる「極匠炊き」があります。
従来の「甘み炊き」の改良版です。今回は甘みより「ふっくら粒立ちの良いごはん」という部分を強調します。味はもちもち系です。
そのほか、冷凍ご飯、お弁当、おかゆなどの各モードがあります。
一方、おこげご飯は、非対応です。
健康米は、玄米・麦ごはん、雑穀米の各モードがあります。
ただ、この部分は、さほど力を入れず、三菱などに比べると「機能はあっさりめ」です。
ご飯の保温は、東芝の「最大の売り」の1つです。
同社の中級機でも説明しましたが、「真空パック」と同等の原理で、0.6気圧で保存し、保温の際の変色を防ぐ効果が期待できます。
最大で40時間の保温に対応します。
真空という技術の裏打ちがありつつの対応ですので、この部分は間違いなく、他社に比べての「強み」と言えます。
お手入れは、楽です。
蒸気口の改良があったので、普段洗うパーツも2点です。内鍋表面も、汚れ落とししやすい「スルッとコート」であり、洗浄も楽でしょう。
ネットーワークは、本機はWi-Fi搭載です。
外出先を含めて状況の確認や操作ができます。
お米を買い替えたとき、銘柄炊きの変更をスマホでできるのは、わりと便利かと思います。離れた両親などの、利用状況の「みまもり」も可能です。
面白いのは、炊飯状況から、お米の在庫量を推測し、なくなりそうな場合通知してくれる機能です。専ら炊飯器にしかお米を利用しない場合は、便利です。
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以上、東芝のRC-10ZWXの紹介でした。
ご飯を「手間なく保温したい」方には間違いなくおすすめできる高級機です。朝炊いて夕方もそのまま食べる場合の味の変化は、恐らく最も低い機種です。
味の部分も、「手間なく美味しいご飯」が炊ける点が強調できます。
米の銘柄や食感、水硬度をあらかじめ設定さえすれば、あまり考えずに「完全自動」で、同じ出来映えのご飯が炊きやすいと言えます。
お米の浸水にも配慮があるので、季節によるお米の水分率に影響される部分も少なそうな点でも、このことが言えるでしょう。
炊飯自体の工夫も、新しいIHコイルの改良を含めて、従来機より同社の理想と言える「かまど炊き」に近づいたと評価できます。
「開発者が食べて欲しい」とおもっているメーカーの味は高いレベルで再現できそうです。
一方、銘柄炊きは充実する一方、(硬さ・食感などの)マニュアル調整は、他社よりさほど細かく調整はできません。いろいろ設定を試したい方には向かない部分はあります。
こうした部分で、忙しい「現役世代」の炊飯部分の時短には、総合的に向いた機種と言え、同社の狙いもそこにあると思います。
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【2023年発売】
45・東芝 炎匠炊き 真空圧力IH RC-10ZWV(K)
45・東芝 炎匠炊き 真空圧力IH RC-10ZWV(W)
¥54,000 楽天市場 (7/1執筆時)
【2022年発売】
46・東芝 炎匠炊き 真空圧力IH RC-10ZWT-K
46・東芝 炎匠炊き 真空圧力IH RC-10ZWT-W
¥59,800 楽天市場 (7/1執筆時)
炊飯方法:可変圧力IH炊飯
圧力炊飯:1.2気圧
内釜素材:備長炭かまど丸釜
内釜厚さ:7mm
内釜保証:3年保証
保温機能:極め保温
堅さ調整:5段階+銘柄炊き
なお、このグレードも2023年以前の旧機も残ります。
既に見た中級機と同じで、24年機は圧力・蒸気弁周りの改良があり、炊飯プログラムも「追い焚き」の火力強化がありました(匠の追い炊き)。
プログラムも、「極匠炊き」は非対応です。
この世代は「真空αテクノロジー」を利用した「甘み炊き」がプレミア炊飯モードでした。
先述のように、最近のブランド米は低アミロースでもともと甘いので、新機種では訴求の方向性を変えたということでしょう。
お手入れも、蒸気弁の掃除が必要なので、新機種よりすこしだけ面倒です。内釜の「スルッとコート」がないです。
保温など、あとはだいたい同じです。
ただし、2世代前の旧機は「(真空)ひたし」機能が、一部のコースのみになります。あとは、冷凍ご飯コースの追加と、Wi-Fi未搭載な部分が違いです。
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結論的にいえば、Wi-Fi不要ならば、2世代前の製品を含めて、こちらを選んでも良いかと思います。
保温や炊飯を含めた「真空」技術も、ほぼ新機種と同じに使えるので、問題ないです。
3-3・日立の高級炊飯器
続いて、、日立の炊飯器の最高級機です。
1回目記事でみたモデルの上位機になります。
【2023年7月発売】
47・日立 ふっくら御膳 RZ-W100GM-K
¥47,792 楽天市場 (7/1執筆時)
【2022年発売】
48・日立 ふっくら御膳 RZ-W100FM-K
¥46,992 楽天市場 (7/1執筆時)
【2021年発売】
49・日立 ふっくら御膳 RZ-W100EM-K
¥48,980 Amazon.co.jp (7/1執筆時)
炊飯方法:スチーム圧力IH炊飯
圧力炊飯:1.3気圧
内釜素材:打ち込み鉄釜
内釜厚さ:3mm
内釜保証:6年保証
保温機能:スチーム保温
堅さ調整:5段階
RZ-W100FMは、日立の最上位機の炊飯器です。
同社は最上位機でも、売出時に6万円強という水準です。
本機は、過去4年分の機種が残ります。
2023年機は、味の部分では、1回目記事でみた同社の中位機と同じで、炊飯プログラムの変更が主です(圧騰甘み炊き)。
もちろん、大事な部分ですが、ハード面の変更はないですし、上表で示される炊飯過程も大きく変化はないため、「マイナーチェンジ」だと言えます。
「甘み12%アップ」との数字がありますが(ほぼ)特定の条件下の話で、宣伝文句の意味合いが強そうです。
なお、上位機の場合、2023年機からWi-Fi搭載で、IOT家電となりました。
食感調整などを登録する「わがや流」や、アプリ専用レシピ、外出先からの炊飯など、他社対応機とだいたい似た機能を持ちます。
しかし、引き続き、お米の銘柄炊きに非対応ですので、他社対応機に比べるとイマイチ「面白くない」という状況です。
2022年機は、新米向きに炊飯プログラムを調整した「極上新米」コースの新設と、保温時のスチーム機能の改良がポイントでした。
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結論的にいえば、2021年機を含めて、いずれもマイナーチェンジですので、買われる際の値段で決めて良いでしょう。
炊飯方式は、スチーム圧力IH炊飯です。
スチームは、先ほどみた同社の下位機と同じで、ふた部分に貯めた水を戻す形の「給水レスオートスチーマー」です。
貯め込んだ水蒸気を、炊飯終盤の蒸らし過程で利用し、甘みを出すために味に欠かせない釜内の温度の維持を狙うものです。
つまり、仕組みは異なりますが、可変圧力のパナソニック(ビストロ)やタイガーと同じ狙いからの工夫です。
いずれにしても、「外硬内軟(外はしっかり、中は柔らか)」という理想の炊飯方式は、この部分の仕組みに由来する部分が大きいでしょう。
ヒーターの段数は、日立は非公開です。
図から察するに底面が2段IH相当で、側面とフタのシーズーヒーターです。
一方、側面ヒーターのパワーは、下位機種(35W)より強力な70Wです。
火力はこの部分で下位機種よりは強いでしょう。
消費電力は、炊飯時最大1400Wです。
先述のように、この部分の高低で年間電気代はさほど変わりません。また、日立も、出荷時設定は「エコ炊飯」にしていて、その消費電力量を示すので、実際の電気代は分かりません。
繰り返し書いていますが、省エネ達成率の意味性は炊飯器では形骸化していて、無意味ですので、あまり気にしないでください。
ただし、最大消費電力が高いので、コンセントの許容容量ほか、ブレーカーが落ちやすいご家庭の場合は、注意点と言えます。
味の部分では、本機は、水温検知機能が搭載です。
これに応じて、水が冷たい場合、温度を少しずつ上げることで炊飯時の浸水時間を調整します(水温あわせ浸し)。
もともと付いていた(炊飯に利用する)下部の温度センサーの応用なので、5度など極端な低温しか見れませんが、「プチ工夫」です。
先述の「外硬内軟」に寄与するとされます。
使われている釜は、「大火力 沸騰鉄釡」です。
この部分は、下位機種と同じグレードです。
先述のように、日立の最上位機は「安い」ので、わりと費用のかかるこの部分に大きな工夫は加えられないとも言えます。
釜の厚さは、非開示です。
ご飯の堅さは 「しゃっきり・普通・もちもち」が選べます(極上コース)。
極上と名前ついていますが、要するに先述の「エコ炊飯」に対しての名前です。
つまり、時間を長めに設定し、その企業の味を提案(あるいは押しつけ)する各社の「プレミア炊飯」とは違う、普通モードです。
一方、面白いのが、新米用の炊飯コースがある点です。
同じ、水加減でしっかり炊けるとされますが、硬さは選べません。見た感じ「しゃっきり〜ふつう」のあいだの火加減ですので、普通のお米を炊く場合、その間の味わいになるでしょう。
そのほか、すしめし、炊き込みご飯、おこわなどのモードがあります。
おこげご飯は、非対応です。
雑穀は、雑穀米・玄米(発芽玄米)・麦ごはんです。
三菱同様に、玄米はわりと力を入れ、3段階の食感調整と、炊きこみご飯、おかゆに対応します。
麦ごはんも、押し麦、もち麦は選択できないものの、3段階の食感が選べます。雑穀米も同じです。
炊きあげたご飯の保温については、「スチーム保温」モードが搭載されます。
ふたの仕組みを利用したもので、下位機種と同じです。
一方、保温対応時間が40時間と下位機種より長く、再加熱予約ができる点が上位です。おそらく、温度のセンシングの部分で、高度なのだと思います。
蒸気カット機能は、搭載です。
下位機種同様、この部分は評価できます。
蒸気セーブ機能が無い機種にくらべて90%近くセーブされます。
スチーム回収機構がある副次的な産物でしょう。
少量炊飯モードも搭載です。
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以上、日立のRZ-W100FMの紹介でした。
他社の最高級機より値段がそもそも安めなので、同様の基準では比較できないでしょう。
逆に、前半で見た同社の1つ下の機種と比べる場合、側面ヒーターのパワー上昇を除けば、(極端な低温がみれるだけの)水温センサー位の違いです。
購入時の値段差にもよりますが、日立の場合は、先ほど紹介した下位機種を選んだほうが、本機より費用対効果は良いと思います。
3-4・アイリスオーヤマの高級炊飯器
つづいて、アイリスオーヤマの高級炊飯器です。
同社は圧力式炊飯器も製造していますが、プレミアム機は、IH式です。
【2021年7月発売】
50・アイリス 瞬熱真空釜 RC-IF50-B
¥26,000 Amazon.co.jp (7/1執筆時)
炊飯方法:IH炊飯
圧力炊飯:
内釜素材:瞬熱真空釜
内釜厚さ:
内釜保証:1年保証
保温機能:
堅さ調整:3段階
RC-IF50-B は、アイリスオーヤマの炊飯器では、最も高価なモデルです。
2021年から新しく展開された、同社初のプレミアム炊飯器となります。
炊飯方式は、普通のIH炊飯です。
ただ、かなり面白い工夫があります。
本機は、釜部分に、作動液が入った真空層があります。それが底面加熱で拡がり、鍋全体が瞬時に加熱するというものです(ヒートパイプ技術)。
即座に全体に熱が伝わるので、温度ムラが生じにくいメリット性があります。
一方、この仕組みの場合、炊飯中に沸騰温度に至りにくいと言えます。
結果、「お米が踊らない」わけですが、アイリスオーヤマによると(同社が目指す)羽釜による炊飯も「踊っていない」ので、それを理想とした、ということになります。
この方式の利点は、ご飯が必要以上に軟らかくならないので、釜の中の場所によらず、米つぶれが少なくなることです。
結果、全体的に、ハリがあるご飯が炊きやすいでしょう。
ただ、「踊らせない」という表現は、言いかえれば、沸騰温度に近い高い温度で炊飯はしていないという意味です。
つまり、米のアルファ化を促さないので、米自身が持つ「甘み」を引き出す力は、少し弱いでしょう。
「かまどご飯」で美味しい「カニ穴」が開くのは、(米が踊るかはともかく)激しい熱対流が起こる結果であるのは確かですし。
消費電力は、1240Wの水準なので、扱いやすいです。
使われている釜は、瞬熱真空釜です。
厚みは非開示ですが、仕組み上、問題ないです。
ただ、先述の作動液が釜側に入る仕組みになるので、かまを持ったときの重さは、5.5合炊きとしては、ずっしりきます。
ご飯の堅さは、やわらか・標準・かためです。
モチモチなどの食感系の指標は、ありません。
銘柄炊き分けには対応します。50銘柄と多いですが、基本的に説明書を見ながら、(標準を含め)6パターンから選ぶだけです。
全パターンのデータがあるわけでないのが、他社と決定的に異なります。
なお、本機は蒸しプレートが付属していて、蒸し料理が可能です。
一方、本機は、量り炊きという機能もあります。
アイリスオーヤマが昔からこだわる部分で、ご飯の重量から適切な水量を教えてくれる機能です。
ただ、この部分は、銘柄だけでなく、お米の水分量は季節によって変わるので、あまり意味がない気もします。むしろ、よそったご飯との重量差でカロリー表示する部分が、便利と思います。
おこげご飯は、非対応です。
健康米は、玄米、麦飯には対応します。
雑穀米は、麦飯と共通モードです。全体として、あまり重視していません。
一方、白米を水加減多めで炊く、低糖質モードがあります。
ただ、ご飯自体は美味しくないです。
ご飯の保温は、弱い部分です。
こちらも低温保存などの特定の機能はありません。
お手入れは、IH式なので問題ないでしょう。
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以上、アイリスオーヤマのRC-IF50-B の紹介でした。
今までの技術の延長線上の製品ではなく、面白い製品です。
方向性としては、「かためでハリがある」系統が基本好きな方に向くでしょう。逆に、「もちもち系」は、確実に苦手とします。
また、沸騰温度をださず「踊らせない」部分で、「米自身の甘み」を引き出す力は、限界がありそうです。かため好きでも、甘みの部分で合わない人はわりといそうです。
3-5・T-FALの高級炊飯器
続いて、フランス発のT-Falの高級炊飯器です。
日本ではお馴染みの、キッチンウェアとキッチン家電のブランドです。しかし、炊飯器については2022年からで、ある種、日本に「逆輸入」するような、形での参戦です。
【2024年発売】
51・T-Fal ザ・ライス RK890 RK890EJP
¥37,900 Amazon.co.jp (7/1執筆時)
【Amazon限定】まな板おまけ
52・T-Fal ザ・ライス RK890 RK890EJPA
¥37,900 Amazon.co.jp (7/1執筆時)
炊飯方法:遠赤外線/IH炊飯
圧力炊飯:
内釜素材:本釜
内釜厚さ:3mm
内釜保証:3年保証
保温機能:遠赤保温
堅さ調整:3段階
ザ・ライス RK890は、ティファールの炊飯器です。
このブログの【多機能調理機の比較記事】で書いたような、マルチな調理機では、炊飯ができる機種を日本市場で前から出していました。
しかし、完全な炊飯器としては、本機が同社での最上位機となります。
炊飯方式は、一般的な、IH炊飯です。
ヒーターの段数は、6段です。
「6層の高火力3次元IH」と表現されますが、写真からして、底面に2段と、側面に4段という構成です。
同じ段数のパナソニック(中位機)と違って、ふたヒーターがない構成です。
ただ、これは理由があり、T-Falの場合、外ふたの中央に近い部分に、遠赤ヒーターを装備するからです。
一方、T-Falは、この製品を「遠赤外線IH炊飯器」と呼びます。
炊飯時には閉じているためニクロム線が見えるわけではないです。しかし、内蓋上部がガラスになっていて、遠赤外線を透過させるような構造になっています。
ここは、他社にない「独自性」なので少し説明を要するでしょう。
上図は【オーブントースターの比較記事】を書くときにAtlasが作った図です。
遠赤ヒーターは、他方式より「物体の表面を素早く加熱できる性質」があります。
「ふたから放出される遠赤外線が、一粒一粒のお米に直接熱を届ける」とT-Falは説明しています。
遠赤外線は、電子レンジのマイクロ波のように水分子を振動させて熱を伝えていく仕組みです。実際、そのように言えるかと思います(内釜と水表自体も温めます)。
ふたヒーターは、三菱やパナソニックなど他社の炊飯器とも使っていました。
しかし、遠赤ヒーターを採用した例は他にないです。遠赤についても、釜の工夫(遠赤釜)はありますが、「真上」からガラスを透過させつつ照射する点で、本機は「新しい」といえます。
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結論的にいえば、実際の炊飯への効果は、あるでしょう。
T-Falは、従来のIH炊飯器に対して、同社の「遠赤外線IH」は、「お米の粒立ちや粒感、甘み向上に効果がある」と説明します(上図)。
比較対象のIH炊飯器の性能が分からないので、これが実際遠赤ヒーターだけの効果なのかは不明です。
しかし、「全面加熱で火力を高め、熱対流を促し、沸騰温度を持続させる」という意図は、三菱電機ほかの「IH炊飯器」の高級機と同じ方向性です。
あえて「遠赤を採用する必然性」があるかは置いておくとしても、同じような効果はあるでしょう。
コンセント電源という限られた電力で、さらに吹きこぼれさせず、炊飯後半過程まで、お米に熱を与え続けるための、同社独自の工夫です。
真面目に考えて作っています。
使われている釜は、「本釜」です。
このブログでは【取っての取れるT-Falのフライパンの比較】もしています。
同社のパンは堅牢なコートで評判ですが、本機もしっかり、2層のノンスティック加工です(3年保証)。
釜自体はパナソニックと同じ方向性で、性質の異なる金属を複合的に利用する形です。ただ、鍋の口の切り方などは、三菱の製品を思わせます。
ただし、鍋の厚みは3mmと薄く、素材も、アルミと鉄のみという構成です。
値段的に仕方ない部分はありますが、圧力やスチームを使わないIH機としては、物足りないです。
ご飯の堅さは、やわらかめ・ふつう・かための3種類の食感が選べます。
そのうえで、おこげご飯も作れます。
そのほか、すしめし・炊き込み・冷凍ごはん・お粥モードがあります。
健康米は、玄米/雑穀粥・もち麦・発芽玄米モードが選べます。
そのほか、三菱電機と同じで、長粒米モードがあります。
ご飯の保温は、遠赤保温という名前です。
上部の遠赤が保温に役立つ理由は非開示です。
ただ、構造的に密閉性を高めた上で、断熱ベルトを装備しつつ、全面から最低限の火力で保温することで、長時間保温をする仕組みですし、一定の効果はありそうです。
最大24時間ですが、12時間を目安にとされていますし、ここが「売り」という機種ではないでしょう。
また、水分率を高め(柔らかめに)に炊くのが好きな方は、この方式だと、保温後にべたつきやすいかもしれません。その部分でも、堅めでハリのあるご飯好きに向く製品です。
お手入れは、IH式ですが、蒸気口の部分がそれなりに複雑な構造です。
回し開けた状態で部品が3点ですので。蒸気口もすこし凹凸があります。
これに加えて、少し特殊形状な内蓋がメンテ対象です。
その上側のガラス部分は、取り外せないのでふき掃除です。圧力を伴わないモデルとしては(多少ですが)面倒な方でしょう。
消費電力は、1180Wの水準で、扱いやすいです。
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以上、ティファールのザ・ライス RK890 の紹介でした。
独自性は「遠赤外線IH」の部分です。
同じ方向性の旧機の味をふまえると炊けるご飯の味は、高級機だと、やはり、三菱電機のIH式に割と近いです。ハリを重視した食感なので、そちらがライバルと言えます。
一方、保温部分と炊き分けの部分が少し弱いほか、お手入れの部分は、はっきりと課題に見えます。
ちなみに、同社は、(炊飯器向けの低圧ではないですが)圧力技術も自社にあるので、圧力を「あえて使わなかった」ことに(三菱のような)意図性があるか、Atlasとしては「気になって」います。
数年後には(しれっと)圧力搭載の上位機が出るかもしれませんが、独自性が強い「遠赤外線IH」という部分を、突き詰めていって欲しいように思いました。
今回の結論!
美味しいご飯が炊ける高級炊飯器は、結論的にこの機種!
というわけで、今回は高性能炊飯器の比較の3回目記事でした。
しかし、記事は、もう少しだけ「続き」ます。
4・高性能炊飯器の比較 (4)
4-1:バーミキュラ〈ライスポット〉
4-2:最終的なおすすめの提案【結論】
もちもち炊飯 ★★★★★
しゃっきり炊飯 ★★★★★
ご飯の甘み ★★★★★
保温性能 ★★★★★
手入れの手軽さ ★★★★★
総合評価 ★★★★★
最終回となる4回目記事(こちら )では、「ホーロー鋳物」となるバーミキュラの炊飯器をを追加でみます。
その上で、全体の「結論編」として、今回紹介した炊飯器の全機種から、目的別・予算別に最もオススメでできる機種を選定していきます!
ひきつづき、よろしくお願いします。
4回目記事は→こちら