今回のお題
写真向けA4カラープリンターのおすすめはどの機種?
ども、Atlasです。
今日は、2023年1月現在、最新の高画質カラープリンター(複合機)の比較の2回目記事です。
1・写真用インクジェットの比較 (1)
1-1:エプソン〈一般向け〉
1-2:キヤノン〈一般向け〉
2・写真用インクジェットの比較 (2)
2-1:エプソン〈プロ用〉
2-2:キャノン〈プロ用〉
3・写真用インクジェットの比較 (3)
=最終的なおすすめ機種の提案
1回目記事では、6色インクの家庭用インクジェットを比較しました。
2回目記事では、「プロ用」として売られる、EPSON・CANONの8色以上の「多色インクタイプ」を引き続き紹介します。
インクコスト ★★★★★
画質(普通紙)★★★★★
画質(写真) ★★★★★
印刷スピード ★★★★★
総合評価 ★★★★★
というわけで、以下では、いつものように、各製品を一機ずつ丁寧に比較していきます。
そして、最後の「結論」では、上表の様なポイントから、予算別・目的別にAtlasの「おすすめ機種」をいくつか提案していきます。
よろしくお願いします。
2-1・エプソンのプロ用プリンター
はじめに、EPSONのプロ向けインクジェットプリンターからです。
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以下では、Atlasのおすすめポイントは赤字で、イマイチと思う部分は青字で記していきます。
【2020年発売】
Windows 7〜11 Mac 10.9〜13.0
【A3ノビ】
21・EPSON プロセレクション SC-PX1V
¥89,980 楽天市場 (1/22執筆時)
インク種類:顔料インク
カラーインク数:6色
黒インク数: 4色
印刷速度:
ふちなし印刷:対応
自動両面印刷:
サイズ:幅515×奥行368×高さ185mm
SC-PX1Vは、エプソンのプロセレクションシリーズに属する「ハイアマチュア」向けの高画質プリンタです。
同社のハイエンド機ですが、このグレードでは、実に6年ぶりに登場した新機種です。
印刷用紙は、A4だけでなく、A3ノビまで印刷可能です。
本体のサイズは、幅515×奥行368×高さ185mm です。
スキャナ機能のない機種としては「大きい」ですが、従来機の最上位機に比べて68%小型です。
設置性はすこぶる良くなったと言えます。
インクの色数は、10色インク搭載です。
黒・グレー系は4色です。
黒は、光沢・非光沢のフォトブラック・マットブラックが選択できます。
ライトグレーは、旧機種時代からありましたが、今回は、暗部領域のオーバーコートに使われる点が新機軸です。
この製品は、後述する他の上位機とことなり、透明インク(クロマオプティマイザー)がないので、光沢表現の均一化に、この色を利用しているのでしょう。
いずれにしても、光沢紙における黒濃度が高まり、光沢紙対応力が上がっています。
なお、エプソンは、最大1/5,760インチの滴下で、後ほど紹介するキヤノン機は、最大1/4800インチの滴下なので、粒状感はもともと出にくいとは言えます。
カラーインクは、今回は、青系が強化されました。
シアン系3色目となるディープブルー色が加わり6色となります。
したがって強調されるのは、青・紫といった色域の拡大です。
なお、プロセレクションシリーズについては、「全色とも顔料インク」です。
同社の「カラリオ」は、染料インクを利用していましたが、プロ用については、速乾性があり、色温度の調整が容易な「顔料インク」を利用します。
「全量顔料インク」で彩度や階調を出すためには、「10本ものインクが必要」なわけで、クオリティが出せるのは、高級機のみです。
なお、プロセレクションシリーズについては、「全色とも顔料インク」です。
「美術作品」を印刷する機種という位置づけであるため、保存性(耐候性)の高い顔料インクを採用します。
こちらは、染料インクと違って、速乾性があり色温度の調整も容易です。
顔料インク(UltraChromeK3Xインク)は、反射光の関係で一般的に光沢紙でムラが出やすい部分があります。
しかし、エプソンは、この点を補うため、全量とも樹脂コーティングされた顔料インクを利用しており、(ブロンジング現象の部分を含め)弱点は緩和されています。
ただし、10色という(並外れた)色数だから顔料インクでも実現できるのであって、一般的には「染料インク」のほうが「顔料インク」のほうが写真向きです。
カラー印刷のクオリティは、従来の「エプソンカラー」構成を軸に、階調表現を高める方向性です。印刷サンプルを見ても、暗部の階調表現の強化が強調できます。
前モデルでも黒・グレー系インクの改良階調性は最高レベルでした。しかし、黒系インクの構成の改良と、青インクを加えたことがで、すごみが増しています。
結果、黒つぶれを効果的に防ぐことに成功しています。
TVの場合もそうですが、黒の表現力(深み)が増すと、カラー部分の階調性が高まるため、全体的な階調性が劇的に改善します。
モノクロ印刷のクオリティも、高いです。
プロ用の印画紙を用いた展覧会用の印刷も、このグレードならばこなせます。
モノクロ写真モードでは、「冷黒」「温黒」「セピア」などの色調を変えられるモノクロ写真モードも搭載です。
一方、理論的には、文字印刷も「得意」となりますが、この目的に使うには「大げさな機種」でしょう。
EPSON 10色パック IC10CL97
¥20,291 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
純正インクの単価は、上記の通りです。
Epson UltraChrome K3Xインクを10本使うため、消耗品単価は高めです。
写真の世界で費用がかかるのはアナログの昔からそうなので、これは仕方ないです。
メーカー公表印刷コスト
L判光沢紙:約18.9円
実際の印刷コスト
L判光沢紙:約11.8円
フォト年賀状印刷:約17.4円
A4 Photoカラー:約65.3円
インクのコストパフォーマンスは、Amazonでの売価をふまえると、上表のようになります。
写真印刷のコストは、安価ではないですが、驚くほどは高くないという数字です。
A3にのばして印刷しても、1回150円強のコストなので、ハイアマチュア以上なら、趣味の範囲として許される額でしょう。
普通紙印刷のコストは、試算すれば、A4普通紙印刷では約17.3円ほど、A4白黒印刷では約7.5円ほどです。
ただ、このプリンターは、フォト用紙への印字に最適化された製品なので、、あえて言えば、という話です。
印刷速度は、L判の写真用紙の場合44秒というスペックです。
また、A3ノビの写真用紙を利用する場合、約3分17秒になります。
仕様上、時間がかかるのは仕方ないですし、問題もないでしょう。
本体の使い勝手の部分では、本機は、タッチパネル式の液晶が搭載されます。
簡易的ながら画像を確認することができます。
そのほか、機内照明を装備し、閉めたままで、中を確認できるようにもなりました。利便性は上がっています。
自動両面印刷は、構造的に不可能です。
用紙については、ロール紙ホルダーが付属し、ロール紙にも対応できます。
刷り物に利用する場合には便利でしょう。なお、今回から、0.5mmのファインアート紙は、背面給紙も可能になっています。
また、CDのレーベル印刷機能などは付属します。
スキャナーは、こちらはプリンタ専用機のため未付属です。
ネットワークは、USBのほか、Wi-Fiと有線LANでの接続に対応します。
スマホからの写真印刷もフォローします。
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以上、プロセレクションシリーズ SC-PX1Vの紹介でした。
「写真用」としては最高峰機の1つです。
展覧会作品に向けての個人用途のほか、ロール紙を利用したポスターなど業務用機を所有したい場合選択肢となります。
とはいえ、実際のインクコストは、下位機種に比べてさほど高いわけではないです。その点で言えば、初期コストさえなんとかなれば、誰でも長期間楽しめるでしょう。
いずれにしても、デジカメ写真のプリントアウトに最適といえます。
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Windows 7〜11 Mac 10.6〜13.0
【A2ノビ】
【2020年発売】
22・EPSON プロセレクション SC-PX1VL
¥158,373 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
インク種類:顔料インク
カラーインク数:6色
黒インク数: 4色
印刷速度:
自動両面印刷:
サイズ:幅615×奥行368×高さ199mm
また、同型でA2ノビサイズまで対応できるプロセレクション SC-PX1VL という商品もあります。
同じく、10本の顔料インク技術を使う製品ですが、A2サイズということで完全に業務用に向いた品です。注意しましょう。インクタンクの型番も異なります。
2-2・キヤノンのプロ用プリンター
続いて、キヤノンのプロ用プリンターです。
Windows 7〜11 Mac 10.12〜13.0
【2020年発売】【A3ノビ】
23・CANON imagePROGRAF PRO-G1
¥79,724 楽天市場 (1/22執筆時))
インク種類:顔料インク
カラーインク数:6色
黒インク数: 3色
印刷速度:
ふちなし印刷:対応
自動両面印刷:
サイズ:幅639×奥行379×高さ200mm
PRO-G1 は、キヤノンのプロ向けの上級PROLINEシリーズに属する製品です。
ライバルはもちろんエプソンのフラッグシップ機にあたる「プロセレクションシリーズ」です。
本機も、2015年機(PRO-10S)以来の久しぶりの更新でした。
本体サイズは、収納時に、幅639×奥行379×高さ200mm です。
キヤノンの場合も、新機種で小型化をはかっています。
ただし、エプソンの新機種と比較すると、横幅はある仕様です。
印刷サイズは、A3ノビまで印刷可能です。
一方、エプソンと異なりロール紙は対応しませんが、同社のサイトで、対応する他社製の印画紙のICCプロファイルを公開するなど、配慮はあります。
インクの色数は、10色インクタンク搭載です。
エプソン同様に、こちらの上位機は、全色とも乾きの早い「全量顔料インク」です。
カラーについては、シアン・マゼンダ・イエローの原色のほか、レッド・フォトシアン・フォトマゼンダの6色です。
ブラック系については、マットブラックとフォトブラック・グレーの構成です。
ただ、これら9本のインクに、光沢感・暗部の階調表現・インクの段差を整える、透明インクのクロマオプティマイザーが付属するため、総計で10色のインクを利用します。
したがって、構成としては、同じく透明インクを利用するエプソンのSC-PX7VIIに近く、光沢紙への印刷にも強いと言えます。
カラー印刷のクオリティも、高いです。
光沢紙との相性についても、今回新機種から、樹脂インクとなりました。
一方、同社の旧シリーズ(PRO-10S)と比較すると、マットブラックの改良が施され、主に、赤と緑の領域において、階調表現がより高度化しました。
モノクロ印刷のクオリティは、エプソンでもありましたが、「冷黒」などモノクロ写真モードの切替に対応します。
その点で言えば、エプソンの10色機(SC-PX1V)と比較するべき製品かもしれません。
発売後、印刷サンプルをチェックし、傾向を比べてみようと思います。
【10色別売】
CANON インクタンク PFI-G1MBK
¥1,880 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
CANON インクタンク PFI-G1C
¥1,870 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
純正インクの単価は、アマゾンでは(送料込みなので)現状では高めにでます。
大手電器店では、1本当たり1530円前後の実売価格ですので、それで今回は計算します。
なお、エプソンのプロセレクションシリーズと異なり、セット割引販売はありません。
メーカー公表印刷コスト
L判光沢紙 約28.3円
実際の印刷コスト
L判光沢紙 約21.9円
フォト年賀状印刷 約32.2円
A4Photoカラー 約120.8円
インクのコストパフォーマンスは、Amazonのインク売価をふまえた場合、上表のようになります。
カラー印刷のコストは、イマイチです。
セット販売割引がないので、水準としては、エプソンより高めにでます。実際は、インク色の減り方で変わるでしょうが、コスパは良いとも言えないでしょう。
印刷速度は、準性能、L判の光沢用紙の場合、1分05秒というスペックです。
利便性の部分では、新機種になって、3.0インチと小型ですが、液晶モニターが搭載となりました。
ただ、タッチパネル式で、画像も確認できるエプソンと比べると、「ほどほど」です。
ネットワークは、USBとWi-Fiでの接続に対応です。
100Base-Tの有線LAN接続にも対応します。
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以上、キヤノンのプロ向けの PRO-G1 の紹介でした。
透明インクを採用し、光沢紙との相性を高めている機種です。同じ方法をとる、エプソンのSC-PX7V2と比較する場合、色域その他は、本機のほうが良いでしょう。とくに、階調表現は、黒インクが充実するキヤノンは良いです。
一方、エプソンの上位機(SC-PX1)と比較する場合、滴下の細かさとグレーインクという別の方法で光沢紙対応を図っています。
印字結果の好みもありますが、インク粒子が4ピコリットルで、エプソンは2ピコリットルである点で言えば、精密性はすこし下回るとは言えるでしょう。
また、インクタンクがバラ売りだけで、単価も高い点は、本機のネックとなります。
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【2016年発売】
Windows 7〜11 Mac 10.7〜13.0
【A2】
24・Canon PIXUS PRO-1000
¥201,789 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
インク種類:顔料インク
カラーインク数:6色
黒インク数: 3色
印刷速度:
ふちなし印刷:対応
自動両面印刷:
サイズ:約723×435×285mm
一方、従来、キヤノンの上位グレードには、全10色対応の上位機として、 PRO-1000 がありました。すでに生産終了ですが、在庫はまだあります。
【12色別売】
インクタンク PFI-1000
¥5,736 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
色の構成は、先ほどの機種に、フォトグレーが加わった形です。
ただし、純正インクの単価は、1本当たり5000円強の実売価格です。
完全にプロ用です。
「業務用が家庭用にも市販されている」製品ですので、多くのかたには他山の石となるでしょう。
メーカー公表印刷コスト
L判光沢紙 約18.2円
インクのコストパフォーマンスは、一方で、さほど悪くないのは、1本当たりのタンクが大きいからです。
この点についても、インク自体の消費期限は1年ほどであるため、やはり、短期間に大量に印刷出力するプロ業務用の製品です。

【A3ノビ】
Windows 7〜11 Mac 10.12〜13.0
【2020年】
25・Canon PIXUS PRO-S1
¥70,130 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
インク種類:染料インク
カラーインク数:5色
黒インク数: 3色
印刷速度:
サイズ:639×379×200mm
ふちなし印刷:対応
自動両面印刷:
PIXUS PRO-S1も、キヤノンのプロ向けの上級PROLINEシリーズに属する製品です。
こちらも旧機種( PRO-100S)からインク構成が変わっての新機種です。
本体サイズは、約639×379×200mmです。
本機も、横幅がある代わりに、奥行がすこし短め、という製品です。
インクの色数は、8色インク搭載です。
カラーについては、シアン・マゼンダ・イエローの原色のほか、フォトシアン・フォトマゼンダの4色です。
ブラック系については、ブラック・グレー・ライトグレーの4色構成です。
カラー印刷のクオリティは、他のプロ機とは異なります。
なぜなら、この機種は、エプソン・キャノンの「プロ用機」では唯一、全色が染料インクの機種です。
顔料インクと比べて乾きにくく、ある程度、印画紙がにじみます。
また、経年変化による退色もあります。しかし、光沢紙に出した場合の質感は、透明インクや樹脂コーティングを施された顔料インクであっても、染料インクのほうが良いです。
その点で、染料インクの下位機種を使い慣れてきた方には、こちらが「しっくり」来るでしょう。
また、顔料インクは、定着時にムラが出やすく違和感が出やすい点から言って、出力はこちらのほうが楽でしょう。
いずれにしても、写真印刷を気軽に楽しむには、染料インクのほうが気が楽です。
なお、このモデルの旧機種(PRO-100S)と比較する場合、カラーの色域の拡大と、暗部での階調表現の改善が強調されます。
モノクロ印刷のクオリティは、本機も、「冷黒」などモノクロ写真モードの切替に対応します。
【8色別売】
インクタンク BCI-66
¥1,959 Amazon.co.jp (1/22執筆時)
純正インクの単価は、以上のような実売価格です。
直販で売らないので、市価より少し高めですので、こちらも大手電器店での市価(1430円)で計算します。
メーカー公表印刷コスト
L判光沢紙 約24.5円
実際の印刷コスト
L判光沢紙 約27.1円
フォト年賀状印刷 約27.1円
A4Photoカラー 約101.5円
インクのコストパフォーマンスは、上表のようになります。
メーカー公表値より高くなっているのは、2020年以降、インク価格が上がっているからです。
カラー印刷のコストは、8色の染料インク機はライバルがいないので、単純に比較はできないです。
ただ、あまり安くはないです。
印刷速度は、L判の写真用紙の場合30秒というスペックです。
ネットワークは、USBとWi-Fiでの接続に対応です。
100Base-Tの有線LAN接続にも対応します。
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以上、キャノンのPIXUS PRO-S1の紹介でした。
染料インクを「極めたい」場合におすすめできる製品です。
ただ、公平を期して言えば、染料インクは、顔料インクほど搭載タンクの色数で差がでるというわけでもないです。
次回につづく!
写真向きプリンターのおすすめは、結論的にこれ!
というわけで、今回は、高画質で写真印刷にも対応するプリンターの比較の2回目記事でした。
しかし、記事はもう少しだけ「続き」ます。
3・写真用インクジェットの比較 (3)
=最終的なおすすめ機種の提案
インクコスト ★★★★★
画質(普通紙)★★★★★
画質(写真) ★★★★★
印刷スピード ★★★★★
総合評価 ★★★★★
次回の3回目記事(こちら)は「結論編」です。
ここまで紹介してきた機種から、価格別・目的別にAtlasのおすすめ機種を選定していきます。
引き続き、よろしくお願いします。
3回目記事は→こちら